Letter

医学:低温電子顕微鏡法と全原子分子動力学法による成熟HIV-1キャプシドの構造

Nature 497, 7451 doi: 10.1038/nature12162

レトロウイルスのキャプシドタンパク質は構造的には保存されているが、組み立てられた際の形態は多様である。ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)の成熟したキャプシドは、「フラーレン円錐型」モデルにより、最もうまく説明される。このモデルでは、キャプシドタンパク質六量体が連結して六方晶系の表面格子を形成し、格子は12個のキャプシドタンパク質五量体の組み込みによって閉じている。HIV-1キャプシドタンパク質には、7個のαへリックスと1個のβヘアピンからなるアミノ末端ドメイン(NTD)と、4個のαへリックスからなるカルボキシ末端ドメイン(CTD)、そしてこれら2つの構造ドメインをつなぐ310へリックスを含む柔軟なリンカーが存在する。キャプシドタンパク質の集合単位の構造はX線結晶構造学により決定されているが、組み立てられたキャプシド、および集合単位間の接触に関する十分な構造情報は得られていない。今回我々は、チューブ状のHIV-1キャプシドタンパク質集合体の低温電子顕微鏡による8 Å分解能での構造と、低温電子線トモグラフィーによる天然状態HIV-1コアの三次元構造を報告する。チューブ状集合体の構造から、3回軸界面において重要な疎水的相互作用をしている3へリックスバンドルの存在が明らかになった。突然変異誘発実験により、この3へリックスバンドルの中心にある疎水性残基が、キャプシド組み立てと安定性、またウイルスの感染性に非常に重要であることが確認された。低温電子顕微鏡法によって得られた構造から、大規模な分子動力学シミュレーションによるモデリングが可能となり、その結果としてHOH(hexamer-of-hexamer;中心の六量体を囲む6個の六量体という構造)要素や、POH(pentamer-of-hexamer;中心の五量体を包み込む5個の六量体という構造)要素に加えて、キャプシド全体の原子モデルが得られた。五量体の組み込みにより三量体の接触がより密となり、大きな表面曲率が生じる。この原子レベルでの完全なHIV-1キャプシドモデルは、キャプシド機能のさらなる研究や、標的を決めた薬理学的介入のための基盤となる。

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