Letter

構造生物学:Enterococcus hiraeのV1-ATPアーゼの非対称な結晶構造に基づく回転機構

Nature 493, 7434 doi: 10.1038/nature11778

液胞型ATPアーゼ(V-ATPアーゼ)は、多様な細胞膜系でプロトンポンプとして機能しており、骨吸収やがん転移のような多くの過程にかかわっている。そのため、このような膜タンパク質は骨粗しょう症やがんで薬剤標的として関心を集めている。親水性のV1部分は回転モーターであることが知られており、そこでは中央のDF複合体が六角形に配列された触媒A3B3複合体の内部でATP加水分解のエネルギーを用いて回転するが、その分子機構は高分解能の構造情報が得られていないために、よくわかっていなかった。我々は以前に、腸内連鎖球菌Enterococcus hirae由来の、A3B3とDF複合体からなるV1-ATPアーゼのin vitro発現、精製、再構成を報告した。本論文では、A3B3複合体のヌクレオチドを結合していない状態(分解能(2.8 Å)とヌクレオチドを結合した状態(分解能3.4 Å)の非対称な構造を示す。これらから、ヌクレオチド結合により誘起されるコンホメーション変化が明らかとなり、ヌクレオチドは時計回りの回転配向で順番に協同的に結合していくと考えられる。また、V1-ATPアーゼのヌクレオチドを結合していない状態(分解能2.2 Å)とヌクレオチドを結合した状態(分解能2.7 Å)の結晶構造も報告する。DFが結合することで、より密に詰まったヌクレオチド結合部位が誘導されるらしく、ATP加水分解は保存されているアルギニン残基の接近により引き起こされると考えられる。これらの非対称な構造は、V1-ATPアーゼの回転機構を高分解能で示した、我々の知るかぎりで初めての報告である。

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