Letter
環境:海岸の富栄養化は塩性湿地喪失の促進要因である
Nature 490, 7420 doi: 10.1038/nature11533
塩性湿地は生産力の大きな海岸の湿地であり、臨海部の都市の暴風からの保護、栄養の除去、炭素の隔離など、重要な生態系サービスを提供している。しかし、保護策が実施されているにもかかわらず、その生態系の世界的喪失は過去数十年にわたって加速してきた。本論文では、9年間にわたる生態系全体の栄養強化実験のデータを示す。この研究により、栄養強化という海岸生態系の世界的な問題が塩性湿地喪失の促進要因となる場合があることが示された。一般に海岸の富栄養化と結びつけられる栄養レベルは、地上の葉のバイオマスを増加させ、岸辺を安定化させる地下の密な根のバイオマスを減少させて、微生物による有機物の分解を増強することがわかった。こうした重要な生態系特性の変化により、地表が不安定化して入り江の岸辺が崩壊し、その湿地のかなりの部分は植物の生育しない泥地と化す。湿地喪失のこうしたパターンは、人為的に栄養が強化された世界の湿地の観察結果と符合している。そうした湿地では、入り江や湾の縁にある湿地が干潟化したり、入り江の幅が広がったりしている。今回の結果は、多くの海岸生態系に対する現在の栄養流入速度が、有害作用なく湿地が窒素を除去する能力を圧倒していることを示唆している。増加する人口を養うのに必要な肥料の使用量の増大に伴って海岸への窒素フラックスが増加すると予測されることから、湿地の少ない海岸の景観が急速に出現し、海岸地域が重要な生態系サービスや経済的サービスを提供する能力が低下すると考えられる。

