Letter
気候:熱帯の森林の上空を通過した大気による降水量増加の観測
Nature 489, 7415 doi: 10.1038/nature11390
植生は、地表と大気の間の水分、エネルギー、微量ガスの流れを媒介することにより、降水パターンに影響を与えている。森林が牧草や作物に置換されると、土壌や植生からの水分の蒸発散が減少することが多く、大気の湿度が低下して降水量が減少する可能性がある。気候モデルは、熱帯の大規模な森林破壊によって降水量が局地的に減少すると予測しているが、その影響の大きさはモデルや分解能によって異なっている。対照的に、観測研究では、局地的に森林破壊と降水量の増加が結びつけられているが、大規模な森林破壊の影響を調べることはできなかった。今回我々は、熱帯の降水量と植生に関する衛星リモートセンシングデータを利用し、大気輸送パターンのシミュレーションと組み合わせて、森林が熱帯の降水に与える汎熱帯的影響を評価した。その結果、熱帯(南緯30度〜北緯30度)の地表面の60%以上で、過去数日間に豊かな植生の上空を通過した大気は、貧弱な植生の上空を通過した大気と比較して、2倍以上の降水を発生させることが明らかになった。我々は、この経験的相関は、豊かな植生の上空を通過する大気の水分を維持する蒸発散と矛盾しないことを実証している。この経験的な関係をアマゾンの森林破壊の現在の動向と組み合わせると、水循環効率の低下によって、2050年までにアマゾン川流域全体で、雨季では12%、乾季では21%降水量が減少すると見積もられる。今回の観測に基づく結果は、現実に作用している物理的な機構とフィードバックをさらに詳細に調べる気候モデルによる同様の見積もりを補完するものである。

