材料:高伸縮性と高靭性を有するヒドロゲル
Nature 489, 7414 doi: 10.1038/nature11409
ヒドロゲルは、生体組織工学の骨格材、薬物送達用担体、光学や流体工学用のアクチュエーター、生物学的研究用のモデル細胞外マトリクスとして使用されている。しかし、ヒドロゲルの応用範囲は、その機械的挙動によって大幅に制限されることが多い。ほとんどのヒドロゲルは、高い伸縮性を示さない。例えば、アルギン酸ヒドロゲルは、元の長さの約1.2倍に引き伸ばすと破断する。一部の合成弾性ヒドロゲルで、10〜20倍の範囲の伸張が達成されたことがある。しかし、これらの値は、切り欠きの入ったサンプルでは著しく低くなる。ほとんどのヒドロゲルはもろく、その破壊エネルギーは、軟骨の約1,000 J m−2や天然ゴムの約10,000 J m−2と比較して、10 J m−2程度しかない。機械的特性を向上させたヒドロゲルの合成に多大な努力が注がれており、特定の合成ゲルでは破壊エネルギーが100〜1,000 J m−2に達している。今回我々は、イオン性および共有結合性の架橋ネットワークを形成するポリマーからヒドロゲルを合成したことについて報告する。そのようなゲルは水分を約90%含有しているが、初期長の20倍以上に伸長させることができ、約9,000 J m−2の破壊エネルギーを持つ。切り欠きの入った試料であっても、17倍の伸張が示されている。我々は、このゲルの靭性を2つのメカニズムの相乗効果によるものと考えている。2つのメカニズムとは、共有結合性架橋ネットワークによる亀裂架橋と、イオン性架橋ネットワークのアンジッピングによるヒステリシスである。さらに、共有結合性架橋ネットワークは、初期状態の記憶を維持するので、除荷時に大変形の大部分が除去される。イオン性架橋のアンジッピングは内部損傷をもたらすが、再ジッピングによって修復される。今回のゲルは、変形やエネルギー散逸の機構を研究するモデル系として使える可能性がある。また、こうしたゲルによってヒドロゲルの応用範囲が広がる可能性がある。

