Letter

物理:室温固体メーザー

Nature 488, 7411 doi: 10.1038/nature11339

レーザーが発明されて多数の技術革新が生まれ、このデバイスはどこにでもあるものになった。しかし、可視光ではなくマイクロ波放射を増幅するメーザーは、レーザーの誕生に役立ったにもかかわらず、それほど大きな影響を与えなかった。メーザーが比較的知られていないのは、それをさまざまに実現するとき必要な動作条件が不便であることが主な原因である。例えば、原子メーザーや自由電子メーザーは真空容器とポンプによる排気が必要であり、そして固体メーザーは低雑音増幅器として優れており、超高安定発振器に組み込まれることもあるが、通常は極低温冷却が必要である。メーザーの実現にはたいてい、強力な磁石、磁気遮蔽、あるいはその両方が必要となる。このようなさまざまな障害を克服すれば、メーザー増幅器・発振器を組み込んで強化した磁気共鳴スペクトロメーターに基づいた、より高感度な化学分析、より正確な生物分子の構造や機能の決定、より精確な医療診断(トモグラフィーを含む)といった改良への道が開けるであろう。本論文では、パルスモードで室温動作する固体メーザーを実験により実証した結果を報告する。これは空気中で地球磁場中の実験台上で動作し、1.45 GHz付近で増幅する。低温ルビーメーザーとは対照的に、我々のメーザーの利得媒質はペンタセンをドープしたp-テルフェニルの有機分子混晶であり、ペンタセンを黄色光により光励起する。メーザーのポンピング機構は、ペンタセンの三重項基底状態へのスピン選択的な分子の項間交差を利用する。発振器として構成すると、この固体メーザーの測定で得られたおよそ−10デシベルミリワットという出力は、同じような周波数(約1.42 GHz)で発振する原子水素メーザーの出力より約1億倍高い。光励起したペンタセンなどの芳香族分子の項間交差により容易に発生する高レベルのスピン偏極を利用すれば、この新しいタイプのメーザーは、室温よりはるかに低い残留雑音温度で増幅できるように思われる。

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