発生:H3K27デメチラーゼUtxは体細胞と生殖細胞のエピジェネティックな再プログラム化を制御する
Nature 488, 7411 doi: 10.1038/nature11272
誘導多能性幹細胞(iPSC)は、体細胞にさまざまな転写因子を異所的に発現させることで作製でき、典型的にはOct4(別名Pou5f1)、Sox2、Klf4、Myc(これらを略してOSKMという)が用いられる。この過程にはゲノム規模でのエピジェネティックな変化を伴うが、そうしたクロマチン修飾が生化学的に決定される仕組みを知るには、さらなる研究が必要である。本研究ではマウスとヒトにおいて、ヒストンH3のメチル化リシン27(H3K27)デメチラーゼであるUtx(別名Kdm6a)が、分化多能性の維持ではなく、分化多能性の効率的な誘導を制御していることを示す。Utxを欠いたマウスの胚性幹細胞は、細胞系譜の拘束を遂行することができ、成体キメラ個体にも寄与する。しかし、Utxを欠く体細胞では、分化多能性の基底状態に戻るためのロバストな再プログラム化ができない。UtxはOSK再プログラム化因子と直接連携し、自身のヒストン脱メチル化触媒活性によって、iPSC形成を促進する。ゲノム解析からは、再プログラム化中の体細胞でのUtx減少は、抑制的クロマチンH3K27me3の脱メチル化に異常な変動を起こすことが示された。この脱メチル化異常によって、強力な多能性促進遺伝子モジュール(Sall1、Sall4、Utf1を含む)の抑制解除が直接妨げられる。これらのモジュールは協調して、iPSC作製で用いられる外因性OSK補給の代替を果たすことができる。注目すべきことに、Utxは胎生10.5〜11日の始原生殖細胞(PGC)において適時に見られるH3K27me3脱メチル化を保護しており、Utxを欠損したPGCでは、in vivoでの胚成熟の間に、細胞自律性の異常なエピジェネティック再プログラム化の変動が見られる。続いて、胎生12.5日までにPGCの発生が異常になり、Utxをノックアウトした多能性細胞に由来するキメラマウスでは、生殖細胞系列の伝達が減少する。したがって、Utxは多能性の再獲得と生殖細胞の発生に際して異なる機能を果たす新規の調整因子であることが明らかになった。さらに、今回の知見から、in vivoで生殖細胞系列の再プログラム化に際して抑制的クロマチンの消失にかかわる制御分子を、in vitroで基底状態の多能性に向かわせる再プログラム化に転用できるという原理が浮かび上がる。

