発生:線虫でのカスパーゼ非依存的な細胞の押し出しによるプログラムされた細胞除去
Nature 488, 7410 doi: 10.1038/nature11240
後生動物では、正常な発生や組織の恒常性維持、また感染応答や細胞損傷に際して、不必要だったり欠陥があったりする細胞の除去が起こる。多くの細胞は、カスパーゼ介在性のアポトーシスを起こした後に食細胞によるファゴサイトーシスによって除去されるが、ほかの機構による細胞除去も起こる。そうした機構の1つに、カスパーゼ非依存的な過程によると思われる上皮からの細胞の押し出しがあるが、その過程はほとんど解明されていない。本論文では、線虫(Caenorhabditis elegans)の胚発生の際に細胞死を起こすようにプログラムされた細胞集団を除去することが可能な、カスパーゼ非依存的な細胞の押し出し機構を明らかにする。野生型線虫個体では、これらの細胞は形成された直後に、カスパーゼによるアポトーシスを介して死ぬ。しかし、線虫の4つのカスパーゼ遺伝子のすべてを欠失した変異体では、これらの細胞は発生中の胚から卵の胚外空間へ押し出されることにより除去される。これらの脱落した細胞は、アポトーシスに類似した細胞学的、形態学的な特性が見られ、線虫ではカスパーゼがなくてもアポトーシスが起こりうることを示している。この細胞の押し出しに必要とされるキナーゼ経路には、哺乳類のがん抑制キナーゼLKB1と、その結合相手であるSTRADαおよびMO25αの線虫ホモログであるPAR-4、STRD-1、MOP-25.1/-25.2がかかわっている。AMPK関連キナーゼPIG-1は、PAR-4–STRD-1–MOP-25キナーゼ複合体の標的候補であり、やはり細胞の脱落に必要とされる。PIG-1は細胞接着分子の細胞表面での発現阻害により、脱落細胞の脱離を促進する。今回の知見は、標準的なプログラム細胞死による機構とは根本的に異なるアポトーシス細胞の除去機構を明らかにしている。

