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医学:ヒトロタウイルスの細胞付着タンパク質VP8*は、A型の組織・血液型抗原に特異的に結合する

Nature 485, 7397 doi: 10.1038/nature10996

乳児胃腸炎の主な原因となるロタウイルスは、多くのウイルスの例にもれず、まず細胞の特定の多糖(グリカン)との相互作用を介して細胞に付着する。この相互作用にかかわるのは、ロタウイルスのスパイクタンパク質VP4の遠位端にあるVP8*ドメインである。これまでは、「シアリダーゼ感受性」の動物ロタウイルス株は末端にシアル酸(Sia)を持つ多糖に結合するが、「シアリダーゼ非感受性」のヒトロタウイルス株はGM1のように内部にSiaを持つ多糖に結合すると考えられてきた。動物ロタウイルス株の感染にSiaがかかわっていることは結晶学的研究によってはっきりと裏付けられているが、ヒトロタウイルスの場合は、VP8*がSiaと結合する仕組みも、細胞への付着にシアロ多糖が必ず関係しているのかどうかも、まだわかっていない。今回我々は、511の多糖からなる多糖アレイを使ってスクリーニングを行い、ヒトロタウイルス株のVP8*がA型組織・血液型抗原(HBGA)を特異的に認識することを明らかにし、また、HT-29細胞のウイルス感染性が抗A型抗体によって消失すること、またA型HBGAを発現するように遺伝子操作したチャイニーズハムスター卵巣細胞では感染性が大幅に上昇することを示す。これは、ヒトロタウイルスの細胞への最初の付着に関する新たな理論的枠組みとなる。HBGAは遺伝的に決まっている複合糖質で、粘膜分泌物、粘膜上皮、赤血球上に存在し、ピロリ菌(Helicobacter pylori)やノロウイルスのような胃腸系病原菌の感染性と細胞付着にかかわる因子として知られている。我々が行った結晶学的研究によって、A型HBGAがヒトロタウイルスVP8*に結合する位置が、Siaが動物ロタウイルスのVP8*に結合する位置と同じであることが明らかになり、このことは同じような構造的枠組み中のわずかな変化によって、このような受容体切り替えが可能になる仕組みを示唆している。これらの結果は、特定のヒトロタウイルス株に対する宿主の感染しやすさや発症に、世界のヒト集団間で異なるHBGAが遺伝的支配によって発現していることが影響している可能を提起している。

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