Letter

光学:無閾値ナノスケール同軸レーザー

Nature 482, 7384 doi: 10.1038/nature10840

共振器量子電磁力学(QED)効果は、サブ波長共振構造体における物質と電磁場の相互作用によって生じる現象で、近年盛んに研究されている。サブ波長共振構造体によるコヒーレント放射の発生は、微小体積に生じるQED効果を探究する手段としてだけでなく、オンチップ光通信から超高分解能で高スループットの画像化、センシング、分光にまでさまざまな分野に応用される可能性があることから、かなりの関心を集めている。こうした研究の1つは「究極の」ナノレーザー、つまり室温で動作し、チップ上の占有体積が小さく、スケーラブルで閾値が低く、効率のよい放射光源の開発を目的としている。そのようなナノレーザーを実現するために、マイクロディスク共振器やフォトニックバンドギャップ共振器、つい最近では金属共振器や金属–誘電体共振器、プラズモニック共振器といった、さまざまな共振器が提案されてきた。しかし、レーザー発振に必要な閾値パワーを大幅に増やすことなくレーザー共振器を小型化する体系的方法が存在しないことが、究極のナノレーザー実現に向けた進展を阻んできた。今回我々は、一連の同軸ナノ構造共振器について報告する。こうした共振器は、その形状と金属組成によって共振器スケーラビリティーという難問を解決できると考えられる。これらの同軸ナノ共振器を用いて、これまでで最もサイズの小さい室温連続波通信周波数レーザーを実証した。加えて、このような同軸ナノ共振器の設計をさらに改良することによって、広帯域利得媒質で閾値のないレーザー発振も実現した。これらのナノスケール共振器は、レーザー応用を可能にするばかりではなく、原子と場の相互作用が新しい機能性をもたらすQEDデバイスやメタマテリアルを開発する強力なプラットフォームをもたらすと考えられる。

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