Letter 生体力学:トカゲ、ロボット、および恐竜での尾に助けられたピッチ制御 2012年1月12日 Nature 481, 7380 doi: 10.1038/nature10710 1969年に、ある古生物学者が、獣脚類恐竜は高速な、あるいは不規則な動作を行う際に尾を力学的な安定化装置として用いていたという説を提唱し、獣脚類が活動的で機敏な捕食者として描写される一因を作った。それ以来、揺れ動く外肢の慣性は、ヒトの歩行の安定化、霊長類や齧歯類の軽わざ的な動きの補助、またネコが枝の上でバランスを取る能力と関連付けられてきた。ヤモリに関する最近の研究では、よじ登り、直立や滑空の際に尾による能動的な安定化が行われていることが示唆されている。これに対し、トカゲの尾の喪失の影響に関する研究からは、運動能力の低下、向上あるいは変化がないことを裏付ける証拠が示されている。制御理論に基づく枠組みを適用することで、移動運動時の外肢の慣性的な使用に関する一般的な解明が進展する可能性がある。本論文では、トカゲの尾の振り方は正確に調整されていて、これによって角運動量を体から尾へ移し、体の矢状面の姿勢を安定化させていることを報告する。我々は、トカゲの一種のレインボーアガマ(Agama agama)を使い、最初に手前の障害物に飛び乗ってから垂直面に向かって跳躍するように仕向け、その際、障害物の接着摩擦を変化させて体の角運動量に一連の摂動を生じさせて、その様子をビデオ撮影した。既知の制御された尾の反応を検証するため、トカゲと同じサイズで能動的な尾が付いたロボットを製作した。この尾は、本体が傾斜面を走り上がって空中へ飛び出たときに感覚フィードバックを用いてピッチ(左右を軸とする回転)を安定化させる。我々の力学モデルから、尾を揺り動かす体では、硬直した尾や受動的に動く尾を持つ体、または尾を持たない体に比べて、生ずる回転が小さいことが明らかになった。さまざまな尾を比較するため、尾の有効性を、尾のない体の回転が尾によって安定化される量として計算した。モデルの1つとしたベロキラプトル類Velociraptor mongoliensisは1969年の「尾による安定化」仮説を裏付けており、この恐竜では尾の有効性がアガマトカゲを上回っていたことを示している。跳躍するトカゲは、体の姿勢の慣性による制御が外肢の進化の解明を進展させる場合があることを明らかにしており、次世代の操作しやすい捜索救助ロボットに関する生物学的着想を与えてくれる。 Full Text PDF 目次へ戻る