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構造生物学:高度好熱菌Thermus thermophilusの完全なH+駆動型ATP合成酵素のサブナノメートル分解能で得られた構造

Nature 481, 7380 doi: 10.1038/nature10699

回転によってイオンを輸送するATPアーゼは、膜を挟んで形成されたイオン駆動力のエネルギーを用いて細胞へATPを供給するATP合成酵素、あるいはATP加水分解により駆動される膜貫通イオンポンプのどちらかとして働いている。この酵素ファミリーのメンバーには各々2つの回転モーターがあり、1つはイオン移動と回転を共役させ、もう1つは、回転とTP合成またはATP加水分解とを共役させている。ATP合成の際には、酵素複合体の膜結合領域を通るイオン移動により、中央回転子の回転が引き起こされ、これがコンホメーション変化と複合体の触媒領域でのATP合成を駆動する。イオン輸送性回転型ATPアーゼについて、無傷な膜領域についての構造モデルはまだ存在しない。今回我々は、高度好熱菌Thermus thermophilus由来のH+駆動型ATP合成酵素について、氷中の単粒子の低温電子顕微鏡観察により得られた9.7 Å分解能での構造マップを示す。600キロダルトンのこの複合体の全体的なサブユニット構成は、A3B3CDE2FG2IL12である。膜に結合しているモーターは、Lサブユニットからなる輪とIサブユニットのC末端領域からなり、これらはそれぞれ、他のほとんどの回転型ATPアーゼで見られるcおよびaサブユニットに対応する。マップから、輪が12個のLサブユニットを含むことと、Iサブユニットが8本の膜貫通ヘリックスを持つことが示された。L12リングとIサブユニットの膜の中央部分での接触領域は意外に小さく、Iサブユニットの複数のヘリックスが2つのLサブユニットと接触している。Iサブユニットの膜貫通ヘリックスはバンドルを形成し、これが膜を通過するチャネルの半分ずつを作っていて、チャネルの前半部はプロトンをペリプラスムからL12リングへと輸送し、次の半分はL12リングから細胞質へとプロトンを輸送しているらしい。したがって、この構造は膜を挟んで形成されたプロトン駆動力が回転型ATPアーゼの回転へと変換される機序を示唆している。

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