Letter

進化:カンブリア紀の巨大捕食者アノマロカリスの鋭敏な視覚と複眼の起源

Nature 480, 7376 doi: 10.1038/nature10689

カンブリア紀のバージェス頁岩型堆積物の化石では、軟部の構造がきわめて良好に保存されているものの、生体鉱物化が行われていない節足動物の眼については、光学的設計の複雑な細部が最近まで明らかにされていなかった。節足動物の複眼を構成する個眼の構造および発生からは、節足動物クラウン群の最終共通祖先の登場以前に単一の起源があることが裏付けられているが、節足動物ステム群での複眼の出現については、保存状態の十分な化石が手に入らず、ほとんど絞り込まれていない。今回我々は、南オーストラリアのカンブリア紀前期(約5億1,500万年前)のエミュ・ベイ頁岩で見つかった、2〜3 cmの対になった眼について報告する。これは、カンブリア紀の最上位捕食者であったアノマロカリスのものと判断された。その保存された複眼表面は、1万6,000個以上(複眼1個当たり)の六角形の個眼レンズが集合してできており、これは現生節足動物の視覚の鋭敏度が最高レベルの複眼に匹敵する。この標本には2通りの化石生成様式が見られ、酸化鉄(黄鉄鉱から生じた)およびリン酸カルシウムとして保存されていることから、単一のバージェス頁岩型堆積物の内部では、異なる方式の初期続成鉱化作用によって同じ形の細胞外組織(すなわちクチクラ)が再現されうることが確認された。また、この化石は、アノマロカリス類の節足動物との類似性を示す有力な証拠にもなり、複眼の起源を節足動物ステム系統の深部にまでさかのぼらせ、硬化した外骨格などの特徴よりも先に複眼が進化したことを示唆している。このアノマロカリス類の眼から推測される鋭敏な視覚は、この動物が水柱内で視覚を利用する機動性の高い捕食者であったことを示すほかの証拠と整合する。カンブリア紀前期の生態系内にアノマロカリスのような視力に優れた大型で大食性の遊泳性捕食者が存在したことは、5億年以上前に始まった段階的に拡大する「軍拡競争」の加速に寄与したと考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度