Letter

細胞:トップダウン型のプロテオミクス手法を用いたディスカバリーモードでの無傷タンパク質アイソフォームのマッピング

Nature 480, 7376 doi: 10.1038/nature10575

ヒトのプロテオームの完全な記述には、体内のタンパク質分子の成熟型も変化型も検出するという困難な作業が必要である。大規模なプロテオーム解析には通常、無傷タンパク質を分解し、どういうタンパク質かを質量分析法によって推定するという作業が組み込まれてきた。この「ボトムアップ」過程では多数の同定が可能である(1個の遺伝子に対して必ずしも単一のタンパク質が同定されない)。しかし、選択的スプライシングで生じた型の不完全もしくはあいまいな特徴付け、多様な修飾(アセチル化、メチル化など)、および内因性のタンパク質分解からは、複雑な事態が生じ、特にこれらが組み合わさって無傷タンパク質アイソフォームやタンパク質種の複雑なパターンが生じている場合には複雑さが著しい。タンパク質全体を「トップダウン」方式で調べれば、個々のタンパク質についてのこれらの問題は克服できるが、タンデム型質量分析とうまく組み合わせて行える無傷タンパク質の分画方法がないため、プロテオーム規模での解析は実現していない。今回我々は、新しい四次元分画系を用いて、ヒト細胞由来の1,043個の遺伝子の産物を同定した。これらの産物は、翻訳後修飾、RNAスプライシング、タンパク質分解によって3,000を超えるタンパク質種を作り出していた。系全体では、分離能とプロテオームの網羅範囲の両方が20倍以上に高まり、最大で105 kDaのタンパク質や最大11本の膜貫通型ヘリックスを持つタンパク質の同定が可能となった。ヒト内在性タンパク質のこれまで検出されていなかったアイソフォームがマッピングされ、その中にはDNA損傷が誘発する細胞老化(加齢)の加速に応じて多重修飾されたタンパク質種の変化も含まれる。Swiss-Protデータベース(タンパク質のアミノ酸配列データベース)の最新版と総合すると、今回のデータは個々の遺伝子への正確な相関付けを与えるもので、タンパク質分子全体の大規模な調査の概念実証となる。この技術によって、基礎生物学や病気の研究でプロテオミクスデータと複雑な表現型の間の関連の解明が進むと期待される。

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