Letter 物理:反陽子ヘリウムの2光子レーザー分光と反陽子–電子質量比 2011年7月28日 Nature 475, 7357 doi: 10.1038/nature10260 物理法則は、荷電共役・空間反転・時間反転の同時変換の下で不変であると考えられている(CPT対称性)。このことは、反物質の粒子が、対応する物質の粒子と全く同じ質量と同じ絶対値の電荷を持つことを示唆している。準安定反陽子ヘリウム(pHe+)は、通常のヘリウム原子核と基底状態の電子、そして高い主量子数nと軌道角運動量量子数l、n ≈ l+1 ≈ 38を持つリュードベリ状態を占める反陽子(p)から構成される、三体系の原子である。反陽子ヘリウム原子は精密レーザー分光に適しており、原理的には、その結果から反陽子–電子質量比を決定でき、また反陽子と陽子の間の電荷および質量の等価性を検証できる。今回我々は、互いに逆向きに進行する2本のレーザー光線を、p3He+とp4He+の同位体に照射する、反陽子ヘリウムの2光子分光実験について報告する。実験では、深紫外波長(λ = 139.8、193.0および197.0 nm)に存在する反陽子の非線形2光子遷移(n, l)→(n−2, l−2)を励起しているが、このレーザー配置によって、原子の熱運動によるレーザー共鳴線幅のドップラー拡がりを部分的に打ち消すことができた。得られた狭いスペクトル線から、3つの遷移周波数を109分の2.3〜5という分数精度で測定することができた。我々は、この結果を三体量子電磁力学計算の結果と比較することによって、反陽子–電子質量比を1,836.1526736(23)と求めた(括弧内の誤差は1標準偏差)。この値は、既知の陽子–電子の値と同等の精度で一致している。 Full Text PDF 目次へ戻る