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脳:ニューロプシンは扁桃体でEphB2を切断して不安を制御する

Nature 473, 7347 doi: 10.1038/nature09938

トラウマ(心的外傷)を引き起こす出来事を経験した人々のうちの少数は、不安障害を発症する。心理的なトラウマを経験した個体数と不安障害の発症の間に相関が見られないことの理由はわかっていない。細胞外でのタンパク質分解は、ニューロンと細胞外マトリクスの界面での神経可塑性促進を介して、恐怖関連応答の一因となっている。本論文では、マウスを使って、セリンプロテアーゼのニューロプシンが、EphBとNMDAの受容体の相互作用の動態、Fkbp5と不安様行動の発現の調節により、扁桃体でのストレス依存的可塑性に必須であることを示す。ストレスは、扁桃体でニューロプシンに依存したEphB2の切断を引き起こし、その結果EphB2がNMDA受容体NR1サブユニットから解離して、EphB2受容体の膜での代謝回転が促進される。EphB2–NR1の動的な相互作用によってNMDA受容体電流が増大し、Fkbp5遺伝子の発現が誘導されて、不安の行動指標が増大する。ニューロプシン欠損マウスは、ストレス下でEphB2の切断とNR1からの解離が起こらないためにEphB2–NR1相互作用は不変で、Fkbp5遺伝子の誘導は低減し不安の程度も低い。ストレスに対する行動反応は、ニューロプシン欠損マウスの扁桃体内にニューロプシンを注入すると再現され、野生マウスの扁桃体への抗EphB2抗体注入、あるいはFkbp5遺伝子のサイレンシングによって中断される。これらの知見は、扁桃体でストレスが誘発するEphB2タンパク質分解と不安を結びつける新規なニューロン経路を明らかにしている。

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