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気候:サンゴ化石の証拠は鮮新世温暖期における永続的エルニーニョ現象の裏付けとならない

Nature 471, 7337 doi: 10.1038/nature09777

鮮新世の温暖期(500万〜300万年前)におけるエルニーニョ/南方振動(ENSO)系については、赤道太平洋における東西方向の海面水温(SST)勾配が著しく減少し、全域の水温が高い「永続的エルニーニョ状態」が存在した可能性がある。すなわち、鮮新世温暖期は、全球平均温度と大気中の二酸化炭素濃度が近未来の気候条件に類似した温暖期であるが、ENSOの変動とその全球気候への遠隔相関が今日のものと著しく異なっていた可能性がある。しかし、決め手となる低緯度における海面水温の季節変動と年々変動に関する観測による証拠がなかったため、鮮新世温暖期の気候のこの基本的な特徴については、これまで論争が続いてきた。本論文では、鮮新世温暖期には、永続的なエルニーニョ現象が存在しなかったことを示す。フィリピンの鮮新世温暖期に相当する地層から発見された保存状態のよい2つのサンゴ化石それぞれから、月単位の時間解像度を持つ35年間分の記録が抽出され、得られたδ18O SSTおよび塩分濃度代理指標のスペクトル解析の結果、現在のENSOと類似した変動の存在が明らかになった。この化石サンゴを現在のENSO記録と直接比較することはできないが、次の2つの証拠は、フィリピンの化石サンゴがENSOの適切な代理指標であることを示している。第一に、近隣の現生サンゴから得られたδ18Oの偏差がENSOの現在の変動と相関を持つこと、第二に、化石サンゴにおけるδ18Oの負の事象は現在のエルニーニョ時に現生サンゴに見られるδ18Oの減少とよく似ていることである。以前の研究で提唱された鮮新世温暖期の永続的なエルニーニョ状態は、時間解像度の低いSST代理指標を用いているために限界があるが、今回のサンゴ化石を用いた解析結果は、ENSOの構造を確実に解読するために必要な時間スケールで気候変動を同定している。

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