Article 医学:外傷後ストレス障害はPACAPおよびPAC1受容体と関連がある 2011年2月24日 Nature 470, 7335 doi: 10.1038/nature09856 下垂体細胞アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)は、細胞のストレス応答を広く調節していることが知られている。一方、PACAP–PAC1受容体経路が、ヒトの心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの心理的ストレス反応に何らかの役割を持っているかどうかははっきりしていない。我々は、重度の心的傷害を受けた被験者群について調べ、女性ではPACAPの血中濃度と恐怖の生理的性質、PTSDの診断および症状との間に性別特異的な関連性が認められることを見いだした。PACAP(ADCYAP1にコードされる)およびPAC1(ADCYAP1R1にコードされる)の両遺伝子の全域に分布する44個の一塩基多型(SNP)について調べ、PTSDとの性別特異的な関連性を明らかにした。ADCYAP1R1内のエストロゲン応答エレメントと考えられる領域中の単一のSNPであるrs2267735は、女性の場合に限ってPTSDの診断および症状を予測する。このSNPは、恐怖識別およびヒトの脳でのADCYAP1R1メッセンジャーRNA発現と関連している。末梢血でのADCYAP1R1メチル化もPTSDと関連している。齧歯類モデルでの恐怖条件付け、またはエストロゲン補充によってADCYAP1R1 mRNAが誘導されることは、ヒトでのこのような結果を補足するものである。以上のデータは、PACAP–PAC1経路の撹乱が、PTSDの根底にある異常なストレス応答にかかわっていることを示唆している。これらの性別特異的な影響は、ADCYAP1R1のエストロゲンによる調節を介して生じている可能性がある。PACAPの発現量とADCYAP1R1のSNPは、PTSDの発症機構の解明を進めるのに有用なバイオマーカーとなると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る