Letter 細胞:CKIαの除去により、浸潤性制御におけるp53の重要な役割がはっきりする 2011年2月17日 Nature 470, 7334 doi: 10.1038/nature09673 成熟した腸は成体期全体を通して、しばしば傷害性の微小環境において、絶えず急速に再生を続ける。腸上皮の自己再生の主要な推進力はWntを介したシグナル伝達経路であり、また、Wntシグナル伝達は結腸直腸がんで過剰活性化されていることが非常に多い。本論文では、βカテニン分解複合体の構成要素であるカゼインキナーゼIα(CKIα)がWntシグナル伝達経路の非常に重要な調節因子であることを示す。腸でCsnk1a1(CKIαをコードする遺伝子)の除去を誘導すると、大規模なWnt活性化が引き起こされるが、意外なことに腫瘍形成は起こらない。CKIα欠損上皮は、Wnt活性化に加えて、ヒト結腸直腸腫瘍の多くの特徴を示し、特にDNA損傷応答と細胞老化の誘導はどちらも悪性転換のバリアとなっていると考えられている。マウス上皮のDNA損傷応答はp53の相当量の活性化を伴うことから、p53経路がWnt過剰活性化による腫瘍形成促進効果に拮抗している可能性が示唆される。特に、ヒトでの良性腺腫から浸潤性結腸直腸がんへの移行は、通常はp53の不活化と関連付けられおり、悪性化予防におけるp53の重要性が強調される。しかし、p53を介する腫瘍抑制の機構は解明されていない。我々は、CKIαを欠損する腸における腸恒常性維持にはp53を介した増殖調節が必要であることを示す。なぜなら、Csnk1a1とp53あるいはその標的遺伝子であるp21(別名はWaf1、Cip1、Sdi1、Cdkn1a)を組み合わせて除去すると、大量増殖を伴う悪性度の高い形成異常が引き起こされるからである。意外にも、これらの除去によって、非増殖性細胞が絨毛性固有層へ急速に浸潤し、小腸全体に浸潤性のがんが生じた。さらに、p53を欠損する腸でCKIαをコードする遺伝子をヘテロ接合性で欠損させると、高浸潤性のがんが生じるため、p53が不活化された場合にCKIαは腫瘍抑制因子として機能することを示している。我々はp53とCKIαの両方の欠損によって活性化される遺伝子群(PSIS;p53-suppressed invasiveness signature)を同定した。浸潤性の急激な誘導は、おそらくこれらの遺伝子によるものだろう。PSISの転写と腫瘍の浸潤は、細胞周期の制御とは独立に、p21によって抑制された。したがって、PSIS発現抑制を介した組織浸潤の抑制は、野生型p53の腫瘍抑制因子としての新しい機能である。 Full Text PDF 目次へ戻る