Letter 気候:南極半島西側の南大洋海面水温の完新世における変動 2011年2月10日 Nature 470, 7333 doi: 10.1038/nature09751 氷棚の崩壊、海氷と氷河の減少、南極周辺で観測される生態帯の移動は、近年の大気と海洋の温暖化が雪氷圏に与える影響を明確に示している。観測結果やモデル研究から、南極縁辺域における海洋と大気の温度変動が、全球の雪氷圏の安定性や海洋循環、海水準、炭素循環に影響していることが示唆されている。特に、南極半島における近年の気候変化は大きなものであるが、この地域の完新世の気候変動についてほとんどわかっていないため、過去に起こった変動とそのもととなる強制機構との関連において現在起こっている変化を十分に評価することができない。本論文では、完新世の春季の局所的(南緯65度)な日射減少を追う形で、南極半島西側の大陸縁辺における海洋の表面水温が過去1万2,000年にわたって3〜4 °C低下していたことを示す。この結果は、海洋堆積物コアから得られたTEX86海面水温(SST)代理指標からの証拠に基づくもので、南極の海氷の変動の駆動要因としてこの地域の夏季の長さが重要であることを示している。急速に起こった2〜4 °CのSSTの変動は、全球的に認められている気候変動と1,000年の時間スケールで一致している。今回得られたSSTと、南半球の偏西風の再構築結果およびエルニーニョ/南方振動の間に見られる類似性は、熱帯太平洋と南極半島西部の間に存在する現在の気候遠隔結合が、完新世後期に強まったことを示している。これらのことから、完新世には、南極半島西側縁辺の南大洋の海水温は、全球の炭素循環に重要な役割を担っている南半球偏西風の位置変化と結びついて変化していたと結論される。 Full Text PDF 目次へ戻る