Letter 細胞:染色体脆弱部位FRA3Bの脆弱性は細胞型特異的な複製開始プログラムによって決まる 2011年2月3日 Nature 470, 7332 doi: 10.1038/nature09745 細胞遺伝学では以前から、共通脆弱部位とは、複製ストレスがかかったときに切断を起こしやすい染色体領域であるとされてきた。これらの部位は、前がん病変ではがん遺伝子によるDNA損傷の選択的標的となりやすく、さまざまながんで染色体再編成の起こりやすいホットスポットになっていることが次第にわかってきている。共通脆弱部位の不安定性の原因は、複製フォークの移動を妨げるおそれのある二次構造を形成しやすい塩基配列を含むことで、これが複製フォークの崩壊につながり、その結果DNA切断に至るのだろうと考えられている。今回我々は、このような見方に反して、ヒトリンパ球で最も活性の高い共通脆弱部位であるFRA3Bの脆弱性は複製フォークの減速あるいは停止によるものではなく、複製開始が減ることに起因することを明らかにする。実際、繊維芽細胞と違って、リンパ芽球様細胞ではFRA3B部位の中心から約700キロ塩基の範囲で複製開始が起こらなくなっており、複製を完全に行うためにはFRA3B部位の外側からの複製フォークが長い距離をカバーしなければならない。また、FRA3B部位の両側でS期の中期に複製起点が発火すると、複製フォークが減速したときにFRA3Bの複製が不完全になることもわかった。注目すべきは、FRA3Bの不安定性が、このような複製開始パターンを示す細胞だけに特異的に見られることである。哺乳類細胞では複製起点の設定も複製のタイミングも非常に柔軟に決められることが、ここで観察された共通脆弱部位の不安定性に見られる組織特異性の原因と考えられる。すなわち共通脆弱部位とは、ある型の細胞で複製開始が少なく、複製を完全に行ううえで最後に複製される領域であると我々は考える。歴史的理由から、共通脆弱部位の位置は基本的にリンパ球で特定されてきた。したがって、腫瘍での染色体再編成への共通脆弱部位のかかわりについては、それぞれの腫瘍の発生源となった細胞型で脆弱部位をマッピングした後に再評価すべきであろう。 Full Text PDF 目次へ戻る