Letter 細胞:ヒト多能性幹細胞をin vitroで腸組織に分化させる 2011年2月3日 Nature 470, 7332 doi: 10.1038/nature09691 胚発生に関する研究によって、in vitroでヒトの胚性多能性幹細胞(PSC)や誘導性PSCを特定の器官の細胞種に分化させる取り組みが成功している。例えば、ヒトPSCを単層培養の肝細胞や膵臓内分泌細胞に分化させたものは、それぞれ肝疾患および糖尿病の動物モデルで治療効果が認められている。しかし、in vitroで複雑な三次元器官の組織を作出することは、依然としてトランスレーショナル研究の最大の難問である。本論文では、in vitroで一連の増殖因子を時間的に操作して胚での腸発生を模倣し、ヒトPSCを腸組織に分化させるロバストで効率のよい過程を確立したので報告する。この過程には、アクチビン誘導性の胚体内胚葉形成、FGF/Wnt誘導性の後部内胚葉パターン形成、後腸の指定と形態形成、および腸の成長と形態形成と細胞分化を促進する腸分化促進培養系が関与している。結果として形成される三次元の腸「類器官」は、極性のある円柱上皮から構成され、これらは絨毛様構造と腸幹細胞マーカーを発現する陰窩様増殖帯にパターン形成されていた。この上皮には、機能的な腸細胞と共に、杯細胞、パネート細胞、腸内分泌細胞が含まれていた。この培養系をヒトの腸発生を検討するモデルとして用いて、後腸の指定にはWNT3AとFGF4の活性の組み合わせが必要だが、後腸の形態形成の促進にはFGF4のみで十分であることが確認できた。我々のデータは、ヒトの腸幹細胞は発生過程でde novoに形成されることを示している。さらに、腸無内分泌症(enteric anendocrinosis)で変異が見られる前内分泌転写因子であるNEUROG3が、in vitroでのヒトの腸内分泌細胞の発生に必要かつ十分であることも明らかになった。PSC由来のヒト腸組織は、ヒトの腸の発生や疾患について、これまでにない研究を可能にするだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る