Letter 地球:融解によって生じるグリーンランド氷床の移動速度上昇は氷河下での効率のよい排水によって相殺される 2011年1月27日 Nature 469, 7331 doi: 10.1038/nature09740 表面の融解のゆらぎは氷河と氷床の速度に影響することが知られているが、温暖化した気候下でそれらがグリーンランド氷床に及ぼす影響はまだはっきりわかっていない。融解が激しくなると氷床の加速が大きくなることを示唆する研究もあるが、他の研究では、融解が増大したにもかかわらずグリーンランド氷床の流れが長期的に減速したことが確認されている。本論文では、グリーンランド南西部の氷床の終端部が陸上にある地域で記録された氷の動きの人工衛星観測を用いて、融解量が年ごとに著しく異なっていた期間に、氷の流れがどのように発達するかを調べた。氷の速度上昇率のピークは融解の程度と正に相関しているが、夏季の平均流速は相関しておらず、これは1日当たり約1.4センチメートルの臨界流出閾値を超えると、平均として氷河の減速が起きるからである。氷の移動速度がすべての年で同じである夏季前半とは対照的に、夏季後半における速度増大は温暖な年では62±16パーセント少なくなっている。結果として、温暖な年には氷の移動が速い時期は3倍短くなり、全体として夏季の氷の流れは遅くなる。この振る舞いは底部の潤滑化のみから予測されることとは一致しない。これはむしろ、融解が大きい年に氷河下の排水が効率よく起きるようになると、融解が引き起こす氷移動の加速が停止する山岳氷河の振る舞いと似ている。空隙排水モードと流路排水モードの切り替えを取り込んだ氷床流れのモデルは、流出閾値、流れが速い時期、観測された夏季後半の速度と矛盾しない。気候温暖化シナリオのもとでのグリーンランド氷床の流れのシミュレーションは、氷河下の排水の動的変化を説明できると考えられるが、底部の潤滑化のみを取り込んだ単純なモデルでは気候温暖化に対する氷床の応答の重要な部分をとらえられない。 Full Text PDF 目次へ戻る