Article 脳:記憶の固定と強化におけるIGF-IIのきわめて重要な役割 2011年1月27日 Nature 469, 7331 doi: 10.1038/nature09667 本論文では、ラットにインスリン様増殖因子II(IGF-II;別名IGF2)を投与すると、記憶保持が大幅に強化され、忘却が防止されることを報告する。抑制性回避学習を行わせると、海馬でのIGF-II発現が増した。この発現は、転写因子CCAATエンハンサー結合タンパク質βを必要とし、記憶の固定に不可欠である。また、訓練後もしくは記憶想起後に海馬に組み換えIGF-IIを注射すると、記憶保持と忘却防止が著しく強化される。この効果を得るには、IGF-IIを記憶固定の感受性期間内に投与する必要がある。IGF-IIによる記憶強化には、IGF-II受容体、新規タンパク質合成、活動調節型の細胞骨格関連タンパク質の働き、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)が必要だった。さらに、この強化は、シナプス部位でのGSK3βの大幅な活性化と、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸受容体のGluR1サブユニット(別名GRIA1)の発現増加と相関していた。海馬切片でIGF-IIは、弱いシナプス刺激後のIGF-II受容体依存的な持続性長期増強を促進した。したがって、IGF-IIは認知機能強化治療のための新たな標的となる可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る