Letter 地球:カンブリア紀後期海洋における広範なユーキシニアの地球化学的証拠 2011年1月6日 Nature 469, 7328 doi: 10.1038/nature09700 海洋の広範な無酸素化は、大量絶滅の主要な原因であり、また初期地球における進化的放散を長期にわたり阻害したとされることが多い。最近の生物地球化学的研究によると、酸素欠乏はカンブリア紀後期の海洋の亜表層水塊にまで広がっており、この時期の進化事件に影響を及ぼした可能性がある。カンブリア紀の海洋に無酸素状態が広がっていたことを示す明確な物理的証拠はまだなく、したがって古生物学的記録との関連の可能性はほとんど調べられていない。本論文では、全球に分布した6つのカンブリア紀後期海洋岩石の堆積層(約4億9,900万年前)から得られた硫黄同位体記録を提示する。海洋炭素同位体記録にみられる大きくかつ急速な偏位であり、全球炭素循環の摂動を示していると考えられているSteptoean炭素同位体正偏位(SPICE)と同期する正の硫黄同位体偏位が見いだされた。炭素同位体と硫黄同位体の対データの数値箱形モデリングからは、このような同位体変化は、大規模な無酸素および硫化(ユーキシニック)条件下で堆積した堆積物における有機炭素と黄鉄鉱硫黄の埋蔵が一時的に増加したことを反映していることが示唆される。それとは独立に、同年代の黒色頁岩のモリブデン存在量は、一時的に無酸素状態が広がっていたことを確実に示している。これらの結果から、SPICE期間は中生代以前の海洋における最も特徴的な海洋無酸素事件であり、カンブリア紀後期海洋における極端な酸素欠乏の例であると考えられる。したがって、原生代海洋でみられるものに似た酸化還元構造は、顕生代初期の海洋で持続されていたか、再び現れた可能性がある。実際、広範な無酸素状態が起こした環境問題は、支配的ではないにしても大きな影響を、カンブリア紀の海洋における動物進化に及ぼした可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る