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遺伝:造血前駆細胞からの分化系列決定の包括的メチローム地図

Nature 467, 7313 doi: 10.1038/nature09367

最終分化細胞は組織特異的遺伝子を発現しているが、そのDNA塩基配列は変化していないので、系列特異的な分化の基盤には、エピジェネティックな修飾がかかわっているに違いない。造血系は、多能性前駆細胞(MPP)が骨髄系前駆細胞やリンパ系前駆細胞へ分化していくにつれ、しだいに分化能が制限されていくため、細胞の運命決定の間に起こるエピジェネティックな修飾を研究するためのわかりやすいモデルとなっている。Dnmt1ハイポモルフ(発現量減少変異)にみられる骨髄赤血球前駆細胞への偏りによって明らかなように、骨髄系とリンパ系のどちらかへの分化にはDNAメチル化が極めて重要な役割を果たしているが、造血前駆細胞についても、またいかなる多能性/寡能性系列についても、包括的なDNAメチル化地図は存在しない。今回我々は、MPP、リンパ球系共通前駆細胞(CLP)、骨髄球系共通前駆細胞(CMP)、顆粒球/マクロファージ前駆細胞(GMP)、胸腺細胞前駆細胞(DN1、DN2、DN3)について、ゲノム全域にある460万か所のCpG部位を調べた。リンパ球系、骨髄球系両方の分化制限に伴って、著しいエピジェネティックな可塑性がみられた。骨髄球系への拘束ではリンパ球系への拘束に比べて全体的にDNAメチル化が少なく、このことは、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を投与すると骨髄系前駆細胞への偏りが生じることから、機能的にも裏付けられた。CpG島よりも、CpG島周辺部でのほうが、DNAメチル化の差異と遺伝子発現の関連性が強く表れた。これまでリンパ球系/骨髄球系の分化の選択にかかわることが知られていなかった遺伝子や経路が、Arl4cJdp2をはじめ、数多く同定できた。Meis1など、いくつかの転写因子は、分化の際にメチル化されて抑制されることから、未分化状態の維持に関与していることが示唆される。また、造血系の分化においては、エピゲノムの修飾因子のエピジェネティックな修飾が重要らしい。今回の結果から、系列特異的な分化に際してDNAメチル化の調節が起こり、それが、骨髄球系に進むかリンパ球系に進むかの運命決定を伴うメチル化および転写変化の全体像を決めることが直接実証された。

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