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細胞:哺乳類のS期チェックポイントが働くには、ATRによるMLLのリン酸化が必要である

Nature 467, 7313 doi: 10.1038/nature09350

細胞周期チェックポイントはゲノムの安全装置として、遺伝的な誤りの蓄積を防いでいる。チェックポイントが失われるとゲノムが不安定になり、がんの発生につながる。遺伝学研究により、G1、S、G2、M期チェックポイントの中でも、無傷のS期チェックポイントがゲノムの完全性維持に大きな役割を果たしていることが示されている。多細胞生物のS期チェックポイントの基本構成はおおよそわかっているが、作用機構の詳細はまだ明確にはなっていない。ヒト第11染色体q23バンドの転座によってMLL遺伝子が破壊されると、予後不良の白血病の原因となる。今回我々は、MLLが哺乳類S期チェックポイントネットワークの新規なエフェクターであることを突き止め、チェックポイントの機能不全がMLL型白血病の根本原因の1つであることを明らかにする。S期に遺伝毒性ストレスがあると、それに応じてMLLのセリン516がATRによってリン酸化され、MLLとSCFSkp2 E3リガーゼとの結合が壊れる。すると、このE3リガーゼによるMLLの分解が起こらなくなり、MLLが蓄積する。安定化したMLLタンパク質がクロマチンに蓄積し、後期複製開始点のヒストンH3リジン4をメチル化し、CDC45の結合を阻害してDNA複製を遅らせる。MLLが欠失した細胞では放射線抵抗性DNA合成が起こり、S期チェックポイントの機能不全の指標となる染色分体型ゲノム異常がみられた。Mll−/−MllMll1ともよばれる)マウスの胎仔繊維芽細胞に野生型MLLを入れて再構成すると、S期チェックポイントの機能不全が回復したが、MLLのS516A変異体やΔSET変異体では回復しなかった。また、ヒトt(11;16)白血病を模倣したMll–CBPノックイン対立遺伝子をもつマウス骨髄前駆細胞は、重度の放射線抵抗性DNA合成表現型を示した。MLLの融合はドミナントネガティブ型の変異として作用し、DNA損傷に応じて起こるATRによる野生型MLLのリン酸化/安定化を阻害するため、S期チェックポイントの機能が損なわれる。これらの結果を総合すると、MLLが哺乳類のDNA損傷応答経路の重要な構成因子であることがわかり、おそらくMLLの転座によって生じるS期チェックポイントの脱制御が、ヒトMLL型白血病の発症に結びついているものと考えられる。

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