Letter 生態:ノイズのある非線形的な動的生態系のための統計的推論 2010年8月26日 Nature 466, 7310 doi: 10.1038/nature09319 カオス的で動的な生態系は、従来の統計分析の方法では解析できない。動態がカオスに近い系でも事情はほとんど変わらない。そうした系は、ほぼ常に、内在する動的過程に加えて、個体数動態的および環境的過程のノイズによって駆動されており、観察には必ず誤差を伴う。過去の履歴に対する生態系の感受性とは、駆動力となるノイズの具現化すなわち系のパラメータの微細な変化が、系の軌跡に大幅な変化を生ずることを意味する。この感受性は、観察可能なデータおよび過程のノイズの同時確率密度によって継承および増幅され、統計的適合度の尺度を得るための基盤として使えなくなってしまう。この同時密度は、従来のあらゆる統計的方法で用いられている適合度測定法の基礎であるため、これは大きな理論的弱点である。カオスおよびカオスに近い状況では、生物学的動態モデルに関して、その場しのぎでなく根拠の十分な統計的推論を行うことができないため、動態理論には依然として、ほかの生物科学分野で重要なツールとなっているような定量的検証法がないままである。本論文では、この難題が、推論が必要な動態モデルから系に関する観察データをシミュレートする能力のみを必要とする方法を用いて、単純かつ普遍的に解決できることを明らかにする。生のデータ系列は位相非感受性の要約統計量に還元され、局所的な動態構造および観察値の分布が定量される。モデルのパラメータが与えられれば、シミュレーションを用いて統計量の平均および共分散行列が得られ、モデル適合度を評価する「合成尤度」の構築が可能となる。この尤度は直接的なマルコフ連鎖モンテカルロサンプラーで検討できるが、後処理段階を1つ加えることで尤度に基づく純粋な推論が得られる。この方法を適用することで、Nicholsonの古典的なヒツジキンバエ実験でみられた揺らぎの動的性質が確証された。 Full Text PDF 目次へ戻る