Letter

物理:スピン–格子結合によって生み出された強い強誘電強磁性体

Nature 466, 7309 doi: 10.1038/nature09331

強誘電強磁性体は極めてまれにしか存在しないが、本来的に関心がもたれるマルチフェロイック材料である。新しい技術が生まれる可能性があるこの材料は、電界効果エレクトロニクスの低電力性および高速性と、電圧に制御された強磁性のもつ永続性およびルーティング可能性とを兼ね備えている。さらに、このような現象を同時にみせるいくつかの化合物の特性は、有用な強誘電体や強磁性体と比べると微々たるもので、自発分極や自発磁化は1,000倍以上も小さい。同じことは、磁場や電場に誘起されるマルチフェロイック物質にも当てはまる。このような単相マルチフェロイック物質の弱い特性のため、現在のところ、圧電成分と磁歪成分の歪結合を含む複合法や多層法が実用に最も近い。しかし、最近、強誘電強磁性体を得る新しい方法が提案された。この方法では、単一の制御パラメーターとして歪みを使い、強誘電性でも強磁性でもない磁気秩序絶縁体を強誘電強磁性体へと変える。対象系であるEuTiO3は、大きな2軸圧縮歪下で強い強磁性(自発磁化は1 Eu当たり約7ボーア磁子)と強い強誘電性(自発分極は約10 µC cm−2)を同時に示すと予測されている。これらの値は、既知のどの強誘電強磁性体に比べても数桁高く、強誘電性あるいは強磁性のみを示す最良の材料に匹敵する。要求される圧縮が得られる適当な基板がないため、我々は引張歪を使うことにした。本論文では、2軸張力の下でマルチフェロイック状態が出現し、必要な歪みはずっと小さく、より厚い高品質の結晶性の膜が得られるという予想外の利点があったことを、実験と理論により示す。強い強磁性強誘電性が実現できたことで、スピン–格子結合機構の高温での発現につながる道が示された。今回の成果は、単一の実験パラメーターである歪みが、複数の秩序パラメーターを同時に制御しており、マルチフェロイック物質を生み出すための組成に代わる実行可能な調整パラメーターであることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度