Letter 脳:不安気質の扁桃体基盤と海馬基盤には遺伝性に違いがある 2010年8月12日 Nature 466, 7308 doi: 10.1038/nature09282 不安気質(anxious temperament ; AT)とは、ヒトをはじめとする霊長類で成長の早い時期からみられる一種の形質様表現型で、軽度の脅威的刺激に対しても大きな行動反応や生理学反応を示すことを特徴とする。小児での研究から、ATは後になって発症する不安障害、うつ、そして共存する薬物乱用の重要なリスク因子の1つであることがわかっている。ATは精神病理学上の早期予測因子として重要であるにもかかわらず、素因のある子どもにATを発生させる因子やAT発現の基盤となる脳機構については、ほとんどわかっていない。ATに関係する神経回路の特徴を明らかにし、その回路にどの程度遺伝性があるかを知る目的で、ATの表現形をもつ多数のアカゲザル標本を分析した。単一の家系に由来し複数世代にわたる若齢のサル238頭について、ATを誘発する適切な行動条件に曝露したときの脳の代謝活動とATの発現を同時測定した。18F標識デオキシグルコースを使う高解像度陽電子放射断層撮影法(FDG–PET)を画像解析法として採用した。この方法は、グルコース代謝率絶対値の半定量的指標となり、行動と脳活動を同時に測定でき、気質に関係した持続的な脳反応を調べるのに適した長い時間経過を追跡できるためである。解析の結果、扁桃体中心核領域と海馬前方部が、AT発現を予測させる神経回路の重要な要素であることがわかった。また、定量的遺伝解析によって、ATの表現形には有意な遺伝性があることもわかった。さらに、ボクセルレベルの解析によって、ATと関連した海馬の領域の代謝活動にも有意な遺伝性があることもわかった。しかし、ATを予測させる扁桃体領域の活動には、有意な遺伝性はみられなかった。また、海馬領域と扁桃体領域の遺伝性には相互間に有意な差があった。これらの構造は密接に関連してはいるものの、ATへの関与の仕方や不安障害・うつへ進展する継続性のリスクについては、異なる遺伝子群と環境の影響下にあることが示唆される。 Full Text PDF 目次へ戻る