Letter 医学:熱帯熱マラリア原虫の分岐型トリカルボン酸回路 2010年8月5日 Nature 466, 7307 doi: 10.1038/nature09301 トリカルボン酸回路は炭素代謝の中心となる「ハブ」であり、解糖、糖新生、呼吸、アミノ酸合成などの生合成経路を結びつけている。だが、細胞内に寄生するマラリア原虫属(Plasmodium spp.)は、著しく簡素化された炭素代謝ネットワークをもち、トリカルボン酸回路の役割は重要でないのではないかとずっと以前から考えられてきた。赤血球期のマラリア原虫はエネルギーをほぼ完全にグルコース発酵に依存しており、酸素消費量はごく少ないにもかかわらず、そのゲノムは完全なトリカルボン酸回路に必要な酵素すべてをコードしている。今回我々は、13C標識化合物の代謝を質量分析法によって追跡し、ヒト熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)ではトリカルボン酸回路が解糖とはおおむね切り離されており、典型的な経路とは根本的に異なる方式に従って組み立てられていることを示す。この経路は回路状ではなく、分岐型の骨格をしていて、主要な炭素源がアミノ酸のグルタミン酸とグルタミンであることがわかった。こうした分枝型構造であるために、いくつかの反応は標準的なカルボン酸回路の場合とは逆向きに進まなくてはならず、それによってアセチル補酵素Aの形のC2ユニットが産生される。我々はさらに、グルタミン由来のアセチル補酵素Aはヒストンアセチル化に使われ、一方グルコース由来のアセチル補酵素Aはアミノ糖のアセチル化に使われることを示す。したがって、マラリア原虫は、アセチル補酵素A産生のために、異なる生物学的機能をもつ2つの別の機構を進化させてきた。以上の結果は、マラリア原虫の代謝ネットワークについての解明を大幅に進め、中心となる炭素代謝を独特の環境に応じて変更するその能力をはっきりさせている。 Full Text PDF 目次へ戻る