Letter 細胞:微生物のメタロプロテオームの大部分は解明されていない 2010年8月5日 Nature 466, 7307 doi: 10.1038/nature09265 金属イオン補因子は、タンパク質に事実上無制限といえるほどの触媒能を付与し、電子伝達反応を可能にし、またタンパク質の安定性に大きな影響を及ぼしている。したがって、呼吸(鉄と銅)、光合成(マンガン)、薬物代謝(鉄)をはじめ、生物学過程の大半で金属タンパク質は非常に重要な役割を果たしている。しかし、生物が環境から取り込んだり、メタロプロテオーム中で使用したりする金属の数や種類をゲノム塩基配列から予測することは現在不可能である。それは金属の配位部位が多様であり、ほとんど判明していないからである。今回我々は、ある生物が吸収する金属すべてを決定し、ゲノム規模で金属タンパク質を同定するための、金属に注目するロバストな手法について報告する。これにより、従来のタンパク質に主眼をおいた精製法から、液体クロマトグラフィー、ハイスループットタンデム質量分析(HT-MS/MS)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)のような金属の性質に基づく同定と精製へと、研究の軸足が移る。この方法を使い、超好熱古細菌Pyrococcus furiosusを例として、細胞質金属タンパク質の特徴を調べた。クロマトグラフィーで分画した343の金属ピークのうち、158は予測された金属タンパク質のいずれとも一致しなかった。帰属できないピークの中には、古細菌により使われていることが既知の金属(コバルト、鉄、ニッケル、タングステン、亜鉛;83個のピーク)のほかに、この古細菌が取り込むとは考えられていなかった金属(鉛、マンガン、モリブデン、ウラン、バナジウム:75個のピーク)が含まれる。予想外の158の金属ピークのうちの8個の精製により、ニッケルおよびモリブデンを含む4種類の新規タンパク質が得られた。残る4つの精製タンパク質には、化学量論的量以下の鉛とウランが誤って取り込まれていた。このほかに2種類の微生物(大腸菌とSulfolobus solfataricus)の分析を行い、もっと予想外の金属の種特異的取り込みが明らかになった。したがって、メタロプロテオームはこれまで考えられていたよりもはるかに広範で多様であり、細胞生物学や微生物増殖と毒性発現機構についての貴重な手がかりが得られると期待される。 Full Text PDF 目次へ戻る