Letter 医学:異種間ゲノミクスによりドライバー変異と細胞区画を組み合わせて上衣腫のモデルを作製 2010年7月29日 Nature 466, 7306 doi: 10.1038/nature09173 がんのサブグループで、組織学的にはよく似ているが分子レベルでは異なるものは、生物学的基盤の解明が難しいことが多い。それは、特徴的な遺伝的変異の数がしばしば非常に多いことと、大半のがんの細胞起源が不明なためである。今回我々は、このようながんの不均一性の解明を目的として、マッチする遺伝的変異と起源候補細胞とを統合することで正確な疾患モデルを作製した。まず、ヒトの上衣腫(中枢神経系(CNS)の全域に生じる神経腫瘍の一種)のサブグループを明らかにした。サブグループ特異的な遺伝的変異には、これまで上衣腫との関連が指摘されていない遺伝子の増幅やホモ欠失が含まれていた。上衣腫サブグループを生じる可能性が最も高い細胞区画を選ぶために、ヒト上衣腫のトランスクリプトームと、さまざまな発生段階にあるマウスのCNSの異なった領域から単離した、Ink4a/Arf遺伝子座(Cdkn2aとbをコードする)が無傷状態、あるいは欠失している神経幹細胞(NSC)のトランスクリプトームとを比較した。EPHB2の増幅とINK4A/ARFの欠失をもつヒトのテント上上衣腫のトランスクリプトームは、胚の大脳のInk4a/Arf−/− NSCのトランスクリプトームとだけ一致した。このNSCのEphb2シグナル伝達活性化により、初めての上衣腫マウスモデルができたが、それ以外のNSCでは上衣腫モデルは作れなかったことは注目すべきである。このマウスモデルは浸透性が高く、ヒトのテント上上衣腫のサブグループの1つの組織学的特徴とトランスクリプトームを正確に再現している。さらに、マウスとヒトの腫瘍でマッチするものの比較解析から、シナプス形成を制御する複数の遺伝子の発現とコピー数が、選択的に調節を受けなくなっていることが明らかになり、この経路の破壊が上衣腫当該サブグループの発生に不可欠な事象であることが明らかになった。これらのデータは、がんのサブグループのモデル作製と詳細な解明に、サブグループ特異的なドライバー変異と細胞区画との詳細な照合を行う異種間ゲノミクスが大きな威力を発揮することが実証された。 Full Text PDF 目次へ戻る