Letter 海洋:北太平洋亜熱帯環流の深層水から表層水への硝酸塩の供給 2010年6月24日 Nature 465, 7301 doi: 10.1038/nature09170 貧栄養海洋の大部分の表層混合層では、溶存無機炭素(dissolved inorganic carbon;DIC)濃度が春季と夏季に低下する。物質収支を計算すると、消失するDICは光合成によって粒子状炭素に転換されていなければならない。このDIC取り込みは、世界の海洋における生物群集の正味の生産量を構成する大きな要素の1つである。しかし、海洋のこれらの水域における混合層水では、硝酸塩や燐酸塩などの植物栄養素の濃度は無視できる程度であることが多い。窒素固定や、拡散輸送、鉛直移動のような栄養供給機構を組み合わせても、光合成に必要な栄養を供給するには不十分であると考えられている。渦による一時的な栄養輸送の海盆規模の能力は解明されておらず、そのため、生物が介在するDIC取り込みが、栄養物がない条件下でどのようにして維持されているのかはわかっていない。本論文では、北太平洋亜熱帯環流内での、硝酸塩(NO3−)と酸素(O2)の濃度の高分解能の測定結果を報告する。これは、ハワイ海洋時系列観測点の近くに展開されたプロファイリングフロートを用いて、21か月にわたって行われた。この測定から、2回の年サイクルにわたって、O2が生産されてDICが消費されると、それに対応して溶存NO3−の季節的な低下が水深100〜250 mの水でみられることが実証された。この深層水におけるNO3−不足は、深海へ移送される固定窒素と化学量論的にほぼ釣り合っていた。したがって、表面から250 mまでの水柱を全体として考えると、栄養の供給と需要はほぼ等しい。127の鉛直プロファイルのうちの12に、硝酸塩が蓄積した深層水と栄養の乏しい表層水を結びつける、短期(10日未満)の輸送過程が明らかに存在していた。 Full Text PDF 目次へ戻る