視線速度法を用いて発見された太陽系外惑星に対して、親星のスペクトル特性からは、親星に加えてその周囲を軌道運動している惑星の質量が推定される。惑星の軌道速度が決定されれば、二重線食連星の場合と同様に、親星と惑星の質量はニュートンの重力法則を用いて計算可能と考えられる。本論文では、太陽系外惑星HD 209458bの前面通過の、地上から行われた高分散分光観測について報告する。惑星大気中の一酸化炭素の吸収線に顕著な波長偏移が観測され、我々は、これが惑星の軌道速度の動径成分の変化に起因すると結論付けた。親星と惑星の質量はそれぞれ、1.00±0.22MSunと0.64±0.09MJupである。親星の系統速度に対して約2 km s−1という一酸化炭素シグナルの青方偏移は、今回の観測によって調べられた0.01〜0.1 mbarの大気圧の範囲内で、親星からの照射を受ける惑星の昼側から照射を受けない夜側へと吹いている強い風の存在を示唆している。一酸化炭素のシグナルの強さは、この惑星の上層大気における(1–3)×10−3の一酸化炭素混合比を示唆している。