Letter 神経:聴覚皮質発達中の興奮・抑制の既成バランスの微調整 2010年6月17日 Nature 465, 7300 doi: 10.1038/nature09079 感覚皮質ニューロンの機能的受容野は、発生の過程で精緻化が進んでいく。こうした精緻化は、最適でない興奮性入力が剪定されたり、個々の入力の強度が調節されて興奮性同調特性が変化したり、皮質からの抑制が強化されたりすることで起こるとされている。しかし、これらのモデルは、発達途中で機能的シナプス入力の時空間的パターンを検討することが技術的に困難なため、直接的な検証はなされていない。今回、ラットの一次聴覚皮質(A1)の第4受容層(recipient layer 4)ニューロンに対して、in vivo全細胞膜電位固定記録法を適用し、当該ニューロンへの興奮性・抑制性入力について、その振動数–強度音受容野(tonal receptive fields;TRF)が発達に伴って変化する経過を調べた。意外にも、聴覚経験の開始直後から興奮と抑制の協調的な同調が観測され、この結果は、かなり強力なフィードフォワード抑制を伴う視床皮質間の三者性回路が、聴覚経験とは独立に作られていることを示唆する。音駆動性の興奮性・抑制性入力の振動数範囲は、聴覚経験開始後数日以内に拡大し、成熟後まで維持される。この維持相では、興奮性の振動数同調特性は鋭くなるが抑制性は不変で、結果として成体A1ニューロンは抑制側に広い同調特性をもつようになる。したがって、聴覚経験開始後の皮質シナプスTRFの発達は、それ以前に作られていた興奮–抑制バランスに若干の変更が加わることを特徴とする。今回の結果は、皮質TRFの機能的精緻化は入力の選択的剪定を必要とせず、興奮性入力強度の微調整に依存している可能性を示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る