Letter 医学:ステロイドホルモンのシグナル伝達による乳腺幹細胞機能の制御 2010年6月10日 Nature 465, 7299 doi: 10.1038/nature09027 卵巣ホルモンのエストロゲンおよびプロゲステロンは、乳がんのリスクに大きな影響を及ぼし、このことは、内分泌療法が乳がん治療に有効であることの根拠となっている。卵巣除去または予防的化学療法によって、これらのホルモンの影響を制御することでも、乳がんの発生率は有意に減少する。反対に、短期間での妊娠では、乳がんのリスクが増加する。しかし、これらの知見の基礎を成す細胞機構は、十分に明らかにされてはいない。今回我々は、マウスの乳腺幹細胞(MaSC)にはエストロゲンおよびプロゲステロンの受容体が存在しないにもかかわらず、ステロイドホルモンのシグナル伝達に高い反応性を示すことを示す。in vivoにおいて、卵巣摘出によってMaSCの数および増殖能は著しく減少するのに対し、プロゲステロンおよびエストロゲンを投与したマウスでは、MaSCの活性が上昇した。特に、アロマターゼ阻害薬レトロゾールの3週間投与だけでも、MaSCプールの減少に十分な効果が認められたことは重要である。これ対し、妊娠によってMaSCの数は一時的に11倍に増加しており、これはRANKリガンドからのパラクリン型のシグナル伝達を介したものと考えられる。MaSCプールの増加は、妊娠に伴う乳がん発生率の短期的増加における細胞学的根拠となっている。さらにこれらの知見は、乳がんに対する化学的予防は、MaSC機能の抑制によってもある程度は達成されることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る