Letter

進化:カンブリア紀の原始的な軟体性頭足類

Nature 465, 7297 doi: 10.1038/nature09068

バージェス頁岩型堆積物に非常によい状態で保存された軟体性動物の化石からは、カンブリア大爆発で出現した体制の初期進化に関する重要な手がかりが得られる。これまで、現生軟体動物系統、特に頭足類の初期進化に関しては、その種の堆積物から情報が得られていなかった。従来は頭足類の中で原始的と考えられてきたオウムガイ類は、背負った貝殻によって体の保護や浮力を得ていたカンブリア紀の匍匐性の祖先動物から進化したと一般に説明されている。オウムガイ様の貝殻はカンブリア紀後期以降に出現しているが、化石記録からは、このモデルに対する制約や頭足類の初期進化をしぼり込む情報がほとんど得られていない。今回我々は、分類不明だったカンブリア紀中期の動物ネクトカリス(Nectocaris pteryx)を解釈し直し、バージェス頁岩由来の新しい標本に基づいて、原始的な(すなわちステムグループの)貝殻をもたない頭足類だと判断した。ネクトカリスと共に、分類不明のカンブリア紀前期分類群Petaliliumおよび(おそらく)Vetustovermisは、ネクトカリス科という独特の分岐群を形成している。この科は、何対かの鰓のある軸方向の開放型内腔、幅広の側鰭、物に巻き付けるのに適した1対の長い触腕、柄が短く個眼に分かれていない1対の眼、および前方にある大きく柔軟な漏斗を特徴としている。この分岐群は、頭足類の化石記録を3,000万年以上前まで拡張するとともに、貝殻をもたなかった原始的な頭足類が、近底生性(hyperbenthic)で、おそらく肉食性であったことを示している。漏斗の存在から、頭足類では貝殻の獲得以前にジェット推進が進化したことが示唆される。オルドビス紀に貝殻をもつ頭足類が爆発的に多様化するのに先立って、カンブリア紀には目立たない「導火線」があったと考えられる。

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