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遺伝:1人の肺がん患者由来の2つのゲノム塩基配列から明らかになった変異スペクトル

Nature 465, 7297 doi: 10.1038/nature09004

肺がんは、世界のがんによる死亡の原因の首位を占めるが、その大部分は喫煙者の非小細胞肺がんである。これまでの研究によって、肺がんに広くみられる重要な体細胞変異が同定されているが、こういった研究は、初めから限られた遺伝子群に焦点をしぼって調べているため、得られる変異スペクトルにも制約がある。最近のがん塩基配列解析では、次世代シーケンシング技術を用いて、白血病、乳がん、がん細胞株についてゲノム規模で変異状況が明らかにされている。今回我々は、原発性肺腫瘍の完全な塩基配列(カバー率60倍)と、それに隣接する正常組織の完全塩基配列(カバー率46倍)を解読した。この2つのゲノムの比較により、高信頼度の一塩基変異50,000個以上をはじめ、さまざまな体細胞変異が同定された。この腫瘍の体細胞一塩基変異530個について、詳しい検証を行った。その中には、がん原遺伝子KRAS内の1個と、コード領域にあるそれ以外の391個が含まれている。さらに、大規模な構造的変異43個も詳しく調べた。これらは新しい体細胞変異の大規模セットを構成しており、ゲノム全域での体細胞変異率はメガ塩基当たり17.7個と推定される。特に、発現されていない遺伝子と発現されている遺伝子を比較した場合や、すべてのタンパク質コード遺伝子の最大5キロ塩基上流までのプロモーター領域では、変異に対する選択のパターンが異なることがわかった。また、キナーゼ遺伝子では、アミノ酸が変化する変異が高率で観察された。これらの知見により、一例の肺腫瘍における体細胞変異の全体像が明らかになり、また腫瘍環境内に異なった選択圧が存在することを示す、我々の知るかぎりで初めての証拠が得られた。

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