数十年間にわたる測定値を全球的に平均して得られた、世界の海洋表層300 mでの水温上昇を示す強いシグナル(約10 23 J)は約10年前に報告されており、これは人為的に排出された温室効果ガスに関連した温暖化に起因すると考えられている。ここ数十年間に地球上にもたらされた過剰なエネルギーの大部分は海洋表層に取り込まれてきたが、海洋の温暖化に潜む不確定要素ははっきりしていないため、海水準変動を量的に評価したり、地球規模での放射不均衡を説明したり、気候モデルの良し悪しを評価したりする我々の能力には制約がある。例えば、海洋表層で積算し、年ごとかつ全球的に平均した貯熱量偏差の時間的推移(以下、OHCA変動曲線とよぶ)、もしくはそれと同等といえる海水熱膨張による海面水位上昇については、複数の研究チームがそれぞれ異なる見積もりを発表している。特に、経年変動のパターンは、用いられた手法によって異なっている。本論文では、1993〜2008年までのOHCA変動曲線の不一致の原因となっているいくつかの不確定要素について調べ、投下式水温水深計(XBT)のデータに含まれるバイアスを補正するという困難な問題に着目した。XBTデータは1967〜2002年までの海洋表層貯熱量のin situ測定の大部分を占めており、XBTバイアス補正方法の選択に起因する不確定要素によって、各研究チームがそれぞれの手法で求めた1993〜2008年までの調査期間のOHCA変動曲線のばらつきの大半を説明できることがわかった。不確定要素の多様な原因を考慮しても、異なるXBTバイアス補正方法を用いたいくつかのOHCA変動曲線を合成することで、1993〜2008年について、0.64 W m−2(地球の全表面積に対して計算された)という統計的に有意な線形の温暖化傾向が得られ、その90%信頼区間は0.53〜0.75 W m−2である。