Letter 生理:カルシウム依存性プロテインキナーゼ1はトキソプラズマのエキソサイトーシスに必須の調節因子である 2010年5月20日 Nature 465, 7296 doi: 10.1038/nature09022 カルシウム調節性エキソサイトーシスは、真核生物で広範にみられる過程で、細胞内カルシウムの急激な上昇に応答して分泌小胞が細胞膜と融合し、その内容物を放出する。この過程は、植物や動物での細胞膜修復、ゾウリムシ属(Paramecium)での防御的スパイク発火、膵細胞からのインスリン分泌、リンパ球からの免疫モジュレーター放出やニューロンからの化学伝達物質放出など、種々の細胞機能を調節している。動物細胞では、cAMP依存性プロテインキナーゼ、プロテインキナーゼC、カルモジュリンキナーゼなどのセリン/トレオニンキナーゼが、調節性分泌につながるカルシウムシグナル伝達に関与すると考えられている。植物と原生動物も細胞内カルシウムによって分泌を制御するが、このようなシグナルが伝達される方法はわかっていない。今回我々は、トキソプラズマ(Toxoplasm gondii)のカルシウム依存性プロテインキナーゼ1(TgCDPK1)が、このヒト日和見病原体でのカルシウム依存性エキソサイトーシスの必須の調節因子であることを示す。TgCDPK1の条件的抑制により、TgCDPK1がミクロネームとよばれる特殊小器官のカルシウム依存性分泌を制御しており、その結果、トキソプラズマの運動性、宿主細胞への侵入、および脱出などの必須の表現型が消失することがわかった。これらの表現型は化学生物学の手法により再現され、ピラゾロピリミジン誘導体でTgCDPK1を特異的に阻害すると、トキソプラズマ生活環がミクロネーム分泌に依存する段階で中断された。抵抗性変異体キナーゼを発現させると阻害剤に対する感受性が消失することから、阻害はTgCDPK1に特異的であった。TgCDPK1はアピコンプレックス門の原生動物間で保存されており、また植物や繊毛虫と共通のキナーゼファミリーに属していることから、関連するCDPKがほかの生物でのカルシウム調節性分泌でも機能している可能性が考えられる。このキナーゼファミリーは、哺乳類宿主には存在しないので、検証された標的として、トキソプラズマやアピコンプレックス門原生動物に対する化学療法に使える可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る