Letter


遺伝:生物の門を越えたトランスポゾン水平伝播における宿主–寄生生物間相互作用の役割

Nature 464, 7293 |  Published: |  doi: 10.1038/nature08939


水平伝播(horizontal transfer;HT)、すなわち交雑しない生物種間での遺伝物質の伝達は、真核生物ゲノムの進化において重要な原動力の1つであることがしだいにわかってきている。トランスポゾンはゲノム中を移動し、増殖する能力を備えているので、特にHTを起こしやすい可能性がある。しかし、トランスポゾンが非常に異なる生物種の間でどのようにして広まるのかは、まだ解明されていない。今回我々は、無脊椎動物と脊椎動物の間での4種類のトランスポゾンファミリーのHTが、宿主と寄生生物の相互作用によって進行すること証明した。ベネズエラサシガメ(Rhodnius prolixus)は、さまざまな四肢動物の血を吸うオオサシガメ亜科の昆虫で、ヒトのシャーガス病を媒介する。このサシガメのゲノムには4種類の異なったトランスポゾンファミリーが存在し、これらがさまざまな四肢動物(共通するものもある)のゲノムにも侵入することが明らかになった。このサシガメのトランスポゾンは、南米でのサシガメの主要な哺乳類宿主であるオポッサムとリスザルにみられるトランスポゾンと約98%が同一で、系統発生解析で同じクラスターとなる。また、この4種類のトランスポゾンファミリーの1つは、さまざまな脊椎動物に感染する吸虫類の汎存媒介動物であるヨーロッパモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)のゲノムでも見つかった。その祖先配列は、旧世界哺乳類にみられるトランスポゾンとほぼ同一で、系統発生解析でも同一クラスターになる。これらのデータを総合すると、動物間でのHTの促進に宿主と寄生生物の相互作用がかかわっているというこれまでの仮説の証拠が得られたことになる。さらに、水平伝播したトランスポゾンの増幅によって生じた大量のDNAは、宿主と寄生生物間での遺伝物質の交換が両者のゲノム進化に影響を及ぼすという説を裏付けている。
Full text PDF
プライバシーマーク制度