Letter 脳:Nrg1とErbB4のシグナル伝達による皮質GABA性回路発達の調節 2010年4月29日 Nature 464, 7293 doi: 10.1038/nature08928 統合失調症は、認知や正常な社会行動に必要な複数の脳システムの機能を障害する複合疾患である。この病気が最も目立つ臨床所見を呈するのは、青年期後期か成人期初期になってからだが、多くの証拠から、統合失調症は強い遺伝的要因をもった神経発生上の障害であることも示唆されている。複数の独立した研究により、ニューレグリン1(NRG1)とその受容体ERBB4が統合失調症の重要なリスク遺伝子であることが示されてはいるが、それらが発病に果たす正確な役割はわかっていない。今回、Nrg1とErbB4のシグナル伝達が、哺乳類大脳皮質の抑制性回路の発達を、GABA(γアミノ酪酸)を含有する特定の介在ニューロンの結合形成を細胞自律的に調節することで制御していることを明らかにする。これらの遺伝子が錐体細胞間の興奮性シナプスの形成と機能に役割をもつとする通説的見解とは異なり、マウス新皮質や海馬でのErbB4の発現は、ある種の介在ニューロンに限局していた。特に、ErbB4は、パルブアルブミンを発現するシャンデリア細胞と籠細胞の多くに発現しており、それらの細胞中では、軸索末端とグルタミン酸性入力を受けるシナプス後肥厚部とに局在していた。遺伝子機能獲得および喪失の実験から、in vitroでもin vivoでも、ErbB4が細胞自律的に錐体細胞との軸索軸索間抑制性シナプスの形成を促進していること、この機能はおそらくNrg1を介していることが示された。さらに、GABA含有介在ニューロンでのErbB4発現は、これらの細胞の樹状突起上への興奮性シナプスの形成を制御していた。一方、錐体ニューロン間の興奮性伝達に、ErbB4は必要でなかった。これらの結果は、Nrg1とErbB4によるシグナル伝達が、出生後の皮質のGABA性回路の結線に必要であることを示しており、これらの遺伝子の統合失調症発症への関与に新たな視点を提供している。 Full Text PDF 目次へ戻る