Letter 生化学:低分解能データを用いた超解像生体分子結晶学 2010年4月22日 Nature 464, 7292 doi: 10.1038/nature08892 X線回折は、タンパク質や核酸、またそれらの複合体の原子構造を明らかにすることで、生物系の解明に極めて重要な役割を果たしており、最近ではリボソームのような非常に大きな集合体への関心が高まりつつある。このような大きな集合体は、X線回折が弱いことが多く(分解能が4 Å以下)、そうした低い分解能でも解析がうまく行える方法が必要である。高分子複合体では、構成要素の大部分が未知であっても一部が高分解能でわかっていることがあるが、現在の精密化方法では、複合体全体についての高分解能の初期構造が必要なのでうまくいかない。このような複合体は生物学的に重要であることが多く、5 Åよりよい分解能での独立な回折強度の数は一般に自由度の数を超えるので、その構造決定は原理的には可能だと考えられる。今回我々は、既知の相同構造から特定の情報を加えるが、相同モデルの広域的かつ局所的な変形は可能という方法を導入した。この方法は、タンパク質のアミノ酸配列や機能が進化しても、局所構造は保存される傾向があるという観察結果を用いている。相同モデルの最適な変形と影響は、Rfreeによる相互検証により決定する。高分解能の既知構造を使った3.5〜5 Å分解能でのテストでは、モデルの座標精度、二次構造の記述や電子密度図の質について、我々の方法では従来の精密化よりもかなりの改善がみられた。タンパク質構造データバンクからの19の低分解能結晶構造という典型的なセットの精密化でも、同様の改善がみられた。したがって、低分解能回折データから得られた構造は、高分解能構造と同程度の質をもちうることになる。我々の方法は、微小領域X線回折法を用いた回折強度の弱い結晶の研究や、新たなX線光源からのデータに適用可能である。相同情報の使用は、X線結晶学や低温電子顕微鏡学のみに制限されない。それは、光画像化がサブナノメートルの分解能にまで進歩して、これと似た手法が使えるからである。 Full Text PDF 目次へ戻る