Letter 細胞:カスパーゼの活性化は神経原繊維変化に先行し、それを引き起こす 2010年4月22日 Nature 464, 7292 doi: 10.1038/nature08890 剖検組織を用いた研究では、神経原繊維にタウが蓄積した神経原繊維変化とよばれる部位は、大量の神経細胞死、重度の細胞学的異常、カスパーゼ活性化およびアポトーシスのマーカーが認められる領域と厳密に一致することから、神経原繊維変化がアルツハイマー病およびタウ関連前頭側頭型認知症の神経変性を引き起こすとする説が導かれている。しかし、タウ遺伝子導入マウス(Tg4510系統)のin vivoでの多光子顕微鏡を用いた画像化により、神経原繊維変化、並びに細胞死実行因子カスパーゼの活性化を観察した結果、この説とは逆に、カスパーゼの活性化が最初に生じ、その数時間後から数日後に神経原繊維変化が形成されることを、我々は見いだした。1日以内に新規の神経原繊維変化が形成される。新しい神経原繊維変化が形成された後も、神経細胞は生存を続け、カスパーゼの活性は抑制されていると思われる。同様に、野生型マウスに野生型4リピートタウ(tau-4R)を導入すると、カスパーゼの活性化、タウ切断およびタウ凝集が引き起こされた。野生型マウスで、アデノ随伴ウイルスを介してカスパーゼ切断タウを模倣する構造を発現させた結果、細胞内凝集体、並びに神経繊維変化と関連するコンホメーション・エピトープおよびリン酸化を有するエピトープの出現、完全長の内在性タウの凝集体への動員が惹起された。これらのデータに基づいて我々は、カスパーゼの活性化がタウを切断して神経原繊維変化形成を開始させ、それに続いて切断型のタウが正常型のタウを動員して折りたたみを誤らせ、神経原繊維変化を生じさせるとする新たなモデルを提唱する。神経原繊維変化を有する神経細胞は長命であることから、神経原繊維変化は急性神経細胞死に対する「迂回経路」であろうと我々は考える。神経原繊維のタウではなく、可溶性のタウが、神経変性の基礎となる極めて重要な有害部分なのかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る