Article 遺伝:遺伝子発現の変動性は不完全浸透度の基盤となる 2010年2月18日 Nature 463, 7283 doi: 10.1038/nature08781 生物の個体間にみられる表現型の差異は、その基盤となる遺伝子や環境の違いが原因とされることが多い。しかし、同質の環境下にある遺伝的に全く同一の生物であっても、表現型は多様であり、遺伝子発現のような発生過程の確率的要素からも多様性が生じている可能性が示唆される。多細胞生物における遺伝子発現のばらつきの影響を調べるために、我々は線虫(Caenorhabditis elegans)を使い、野生型細胞の運命が不変で、小型の転写ネットワークによって制御されている腸の特異化について調べた。このネットワークの構成要素に変異が生じた場合の影響は不確定で、一部の変異胚では腸の細胞が発生しないが、ほかの変異胚では腸の前駆細胞が作られる。個々の胚でこのネットワークの遺伝子転写産物を数えることにより、変異体では本来は重複している遺伝子の発現が非常に変動しやすくなり、またこの変動には閾値があって、それにより腸の分化にかかわる主要な調節遺伝子のオン/オフの発現パターンが生じることがわかった。この結果は、発生ネットワークに起こった変異が、本来なら緩衝されるはずの遺伝子発現の確率論的変動を顕在化させることがあり、それによって表現型の変動が顕著になることを実証している。 Full Text PDF 目次へ戻る