Letter

脳:行動学習の開始時における樹状突起棘の迅速な安定化とシナプス増強

Nature 463, 7283 doi: 10.1038/nature08759

行動学習は教示体験に反応する脳の能力に依存しており、多くの場合、幼若時の感受性期に高まる。しかし、教示体験が幼若脳にどのようにして行動学習を誘起するのかは、未解明である。学習の基盤となると考えられているシナプス強化の形式には、脊椎動物脳での興奮性シナプス伝達の主部位である樹状突起棘の安定性や数、大きさの増加などが伴うことが、in vitroの研究で示されている。皮質感覚野でのin vivoイメージング研究から、知覚体験を妨害するとこれらの構造的特徴が影響を受けることや、知覚地図形成の感受性期に樹状突起棘の生成・消失が盛んになることが明らかにされている。こうした知見から、2つの仮説が支持される。1つ目は、感受性期の行動学習能力増加は、学習行動に重要な感覚運動ニューロン上の棘の動態変化が盛んになることに関係するという仮説であり、2つ目は、教示体験は動的に変化する棘を迅速に安定化して強化するという仮説である。今回、感受性期に手本のさえずりをまねて学習する若いキンカチョウについて、二光子in vivoイメージングを用いて棘の動態を測定し、これらの2仮説の当否を検討した。棘動態の測定は、前脳のHVC核(聴覚情報とさえずりの明示的運動表現とが合流する近位部位)で、若いキンカチョウが最初に手本のさえずりを聴く直前と直後に行った。その結果、教示前の棘の生成・消失が盛んなことと、その後のさえずり模倣能の高さは相関していた。また、棘の生成・消失が盛んな若鳥では、手本のさえずりを聴くことでHVCの樹状突起棘の安定化、蓄積および拡大が迅速に(約24時間以内に)起こった。さらに、学習初日の前後にin vivoで細胞内記録を行うと、HVCのシナプス活動のロバストな増加がみられた。これらの知見から、学習行動の調節に重要な感覚運動ニューロン上のシナプスが、教示体験によって迅速に安定化され強化されることで、行動学習が起こることが示唆される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度