Letter 古生物:脊索動物の形質の非ランダムな腐敗が化石の解釈に偏りを生ずる 2010年2月11日 Nature 463, 7282 doi: 10.1038/nature08745 脊椎動物の起源に関する唯一の直接的な情報は、軟らかい体をもつカンブリア紀の脊索動物が例外的に保存されていることにより得られている。その時代の化石脊索動物は、脊椎動物に特有の体制がどのように進化したのかに関して重要な手がかりをもたらすが、生体鉱物化作用が現れる以前の化石記録の解読は困難が多く、解釈には異論や矛盾が生じている。こうした困難さの原因は、化石の生成過程にある。腐敗するに従って、重要な形質がいつどのように変化するのかに関するデータが存在しないため、解剖学的解釈をしぼり込むことができなかったり、その形質が系統発生過程で欠如したのか腐敗によって消失したのかを区別できなかったりする。今回我々は、ナメクジウオおよびアンモシーテス(ヤツメウナギ幼生)を腐敗させる実験により、脊索動物の形質の腐敗による喪失が、ランダムではなく順序立って起こることを明らかにする。系統学的により重要な情報をもたらすものは最も不安定であるが、原始的な祖先形質は腐敗の影響を受けにくかった。したがって、化石形成過程での共有派生形質の喪失と脊索動物祖先形質の相対的に高い保存性により、化石は脊索動物の系統樹の根元部分に誤って位置付けられやすくなる。このデータを脊索動物であるカサイミルス(Cathaymyrus;カンブリア紀中国)およびメタスプリッギナ(Metaspriggina;カンブリア紀カナダ)に応用すると、解釈の難しさがはっきりする。これらの化石は、生体鉱物化作用のない脊索動物のどの腐敗した死骸にでもみえる可能性があるため、脊索動物または脊椎動物の系統樹の根元部分に確実に位置付けることができないのである。予備的データは、この「腐敗フィルター」がほかの生物分類群にも影響を与え、また「系統樹の根元方向へのずれ」が、さまざまな門の初期進化に関する理解に、広範囲に及ぶが現在のところ認識されていない偏りを生じている可能性があることを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る