Letter 生理:動物のクリプトクロムがかかわる磁気受容は、特殊な光化学機構により行われている 2010年2月11日 Nature 463, 7282 doi: 10.1038/nature08719 動物の磁気受容の生物物理学的基盤の解明は、感覚生物学の最重要課題の1つである。最近、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の光依存性の磁気感知は、紫外線(UV)-A/青色光受容体クリプトクロム(Cry)を介して行われていることが見いだされた。今回我々は、遺伝子導入法を用いて、オオカバマダラ(Danaus plexippus)の1型Cry(光受容性をもち、ショウジョウバエのCryに似ている)と2型Cry(転写抑制性をもち、脊椎動物のCryに似ている)が、共にショウジョウバエの磁気受容系で機能しうることと、それにはUV-A/青色光(波長420 nm未満)が必要なことを明らかにした。420 nm以上の波長で2種類のCryが両方とも磁気応答を示さないことは、Cryの磁場感知能力はトリプトファン三連残基から生じるラジカル対の働きによるとする、広く支持されている仮説とは合わない。我々は、ショウジョウバエとオオカバマダラの1型Cryの変異体を用いてこの知見を裏付け、トリプトファン三連残基経路は磁気変換に不可欠ではないことを確かめた。これらの結果を総合すると、動物のCryは、従来みられなかった特殊な光化学機構を介して光依存性磁気受容を行っていることが示唆される。昆虫ばかりでなく、渡り鳥など脊椎動物のCryを介した磁気感知機構の詳細な解明にもショウジョウバエでの遺伝子導入が有用であることを、今回の研究ははっきり示している。 Full Text PDF 目次へ戻る