Letter 化学:歪みのない芳香環へのタングステンの挿入による炭素–炭素結合の開裂 2010年1月28日 Nature 463, 7280 doi: 10.1038/nature08730 C–H結合やC–C結合の遷移金属中心による開裂は、基本的に重要であり、石油原料から複雑な有機分子を合成する際に大きな役割を果たしている。しかし、金属中心へのC–H結合の酸化的付加については多数の例がある一方で、C–C結合の酸化的付加を特徴とする変換はまれである。C–H結合ではなくC–C結合の開裂を伴う変換が少ないことは、立体障害が大きいこととC–C結合を形成するspn混成に方向性があることに起因する速度論的要因と、M–C結合がM–H結合よりも弱いという事実に起因する熱力学的要因によるとされることが多い。したがって、C–C結合開裂に関するほとんどの例が、金属中心のごく近くにC–C結合を保持する金属化合物の使用によって速度論的制限を回避したり、開裂時に歪みエネルギーの緩和や芳香族系の形成を伴う有機基質の使用によって熱力学的制限を回避したりしているのも意外ではない。今回我々は、タングステン中心を用いて、歪みのない6員環芳香環の一部である強いC–C結合を開裂できることを示す。この開裂は、珍しいジイソシアニドキレート配位子の形成によって可能になる。このことは、適切な補助配位子をもつほかの金属中心でも芳香族基質の強力なC–C結合を開裂でき、それによって分子を官能化する新しい方法が得られる可能性を示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る